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備忘録:国家総合職試験 教養区分の所感  1/2

 去年の10-11月にて、国家総合職、いわゆるキャリア官僚のための選考に臨んで通過した。現在は6月の官庁訪問に向けて、どの省庁を志望するか悩んでいる最中である。言うほど思考の時間を取れているわけではないが。

 後輩などから選考について聞かれることも何回かあり、少しでも受験の情報についてオンライン上に記録しておきたいとの考えを持ち書き始めることにした。国家公務員試験受験の情報、中でもこれから述べる「教養区分」についての情報は、まだまだ充実には程遠い。去年から✖️KASUMI というWebサイトでまとまった情報が発信されているが、やはり現段階では多くの視点からの情報があっても悪いことはないだろう。自分自身も、教養区分受験の際には検索上位に出てきたブログなどを確認して対策を考えたりしていた。大学受験のように、情報がこれでもかと氾濫している状況とは全く異なるのである。

 

 そんなこんなで、以下の枠組みで「国家公務員試験・教養区分」のいろはを解説していきたい。「国家総合職 事務職の話であること」「2021年1月時点での情報であること」「細かい話は年度によって変化の可能性があること」ははじめに断っておきたい。

 (1)教養区分の概観

(2)1次試験

(3)2次試験

(4)全体の所感・思うところ

 

(1)教養区分の概観

 流石に概観については、人事院(文字通り、官僚の人事を司るところ)の公式HPにて記載されているため全てを記述する必要もないだろう。第一そこまでの細やかさは自分にはない。ただ、公式サイトに直接は記述されてはいないものの、心にとめておいたほうが良い情報はいくつかある。例えば、

  • 基本的に大学3年生の9-10月(卒業の1.5年前)での受験となり、ここで合格ができなくても専門区分にて再挑戦ができること
  • 上記の事情により、教養区分の倍率は比較的高いこと(2020年度はおよそ20倍)
  • 全体的な官僚志望者の減少とは裏腹に、この区分の申込者は増加していること

あたりだろうか。

 いずれにせよ、しっかり公式説明を読み込んだり、先輩に直接話を聞いたりすることで概要を早めに掴んでおいたほうが良い。自分は1次試験にて全教科(特に理科社会)から出題があることを割と遅くまで信じられなかったが、もれなく真実であった。とんでもない試験である。

 

 ここからは実際の試験の内容について記述していく。文中でも触れるが、人事院が公式に「得点の算出方法」「合格点と各試験での採点状況」を発表している。これを有効に活用することで、情報面や気構えで幾分有利な準備が可能となるだろう。

 

(2)1次試験

 センター試験を思い出す、マーク式のペーパーテストである。試験は第1部(知能試験)と第2部(知識試験)に分かれ、それぞれについて正答数から数学的処理を施して(詳しくはこちら)点数を算出し、合否が判断される。ただのペーパーテスト、ではあるのだが、これのみで構成される1次試験の倍率が10倍、すなわち全体の倍率20倍の半分というのだから恐ろしい話である。テストのあり方に疑問を抱いてしょうがない準備期間だったが、勉強自体は(時たま)有意義に思えたので、以下にそのあり方を記す。

 

第1部・知能試験

 文章読解8問(日本語現代文3問・英語5問)・判断推理8問・数的推理8問(うち資料解釈2問)の合計24問で構成され、制限時間は2時間である。どの問題も、民間就活のSPIなどとは比べ物にならない難易度である。都会の中高一貫校入試問題に近いという声もある。また、24問とはいってもよほどの天才ではない限り全てを解答するのは至難の技である。捨てる問題は柔軟に見極めたい。

 大体どの程度の正解で合格点になるかは上記の情報から各自でシミュレート計算してもらえればいいのだが、およそ17-19問のあたりが合格者の最頻値だろう。20問以上ならば上位層に入るだろう。筆者は一度過去問に取り組み23問を叩き出したが、そこで完全に油断して本番では16問という大事故だった。自らの大体の目標正答数を定め、そこから逆算して時間配分等を決めてゆくのが定石だろう。

 文章読解は英語が苦手でなければ満点を狙えるので、多少時間がかかっても正解を掴みたい。資料問題も数字アレルギーがなければ可能だろう。数的・判断推理は一見どれも難しそうだが、難易度の差は必ず存在する。序盤の問題が基本的には狙い目である。

 対策をするものとしては問題集(いわゆるスーパー過去問・500 など)なのだが、こういった試験を受験する方達なら勉強の方法については十分に心得ていると思う。むしろ問題は、「どれほどの力を注ぐか」という点だと思われる。知能試験は、知識試験よりも勉強のハードルが高いのはイメージの通りである。力がついてきた感触が沸きにくいからだ。一方、点数算出においてはこちらの知能試験の方が重要度がかなり高い。これも年度によるのだが、知能試験1問につきおよそ5点弱、知識試験1問につきおよそ2点強、といったところである。勉強対象を知能と知識に分類したとき、必然的に1種のジレンマに巡り合うのである。当然ながら正解は存在しないが、とにかく自らの力や持つリソース(時間など)をよく見極めて意思決定したい。

 

第2部・知識試験

 自然科学10問・社会科学10問・人文科学10問の計30問、1時間半で行われる試験である。知能試験とは異なりこちらは時間の心配はない。また、おそらく人文科学の枠組みの中で、3問の時事問題が出題されている。およそ6割ほど正解できれば安全圏といったところだろう。

 こちらの方が勉強が「しやすい」のは間違いないのだが、厄介なのはその範囲の広大さである。ざざっと上げると、時事・経済・法律・社会(学)・世界史・日本史・倫理・政治・地理・数学・物理・化学・生物・地学 が存在する。高校で扱う教科は全て高3レベルまで範囲内で(物理基礎のみ、とかではない)、全てを学習するのはよっぽどの暇人(失礼)か要領の良い方でない限り無理だ。ここでは、試験中ではなく試験前に捨てる問題を決めておきたい。また、全てが範囲とはいっても「出やすい範囲・出にくい範囲」は存在するので、問題集などから情報を集めつつその統計的推測に頼ってみるのも悪手ではないだろう。



 以上が1次試験の概要である。記述し忘れていたが、各試験では「基準点」という概念が存在する。これは、その点数ないし正答数を下回った瞬間に1発で不合格、というドボン形式の制度だ。医師国家試験の「禁忌」問題に近いのだろうか。詳しくないが。もっとも、ある程度真面目にこなせば基準点を簡単に下回ることはないはずだが、それはそれとして気をつけたい。今年の基準点は上記の「合格点と各試験での採点状況」に記載されている。

 

 1次試験を通過したら、合格発表のおよそ1ヶ月後に2次試験が開催される。事前準備が必要なものもあり、できるだけ用意をして臨みたいところだ。次はその内実について書いていこうと思う。また、だいぶ受験前に自信をかましていた1次試験が、実は合格点+1点だったことはお恥ずかしい限りである。